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宏池会名誉会長古賀誠を囲んでの座談会

2018/08/30

60周年特別企画として、古賀名誉会長を衆参当選1、2回生(当時)の若手議員が囲み、宏池会の今後等の質問をぶつけた。

大宏池会構想について

若手議員(以下、若手) 質問が2つほどありまして、1つは、今、マスコミの中でも大宏池会構想という話がありますが、これは果たしてどうかということが1点と、もう1点は私はやはり民進党がああいう状況ですから、55年体制じゃないんですけれども、自民党の中で政権を交代していくという、そういう方向に戻ったほうが政治が安定するんじゃないかなと最近思うんですが、いかがでしょうか。

古賀誠名誉会長(以下、古賀) 大宏池会構想というのは、いつもこういう政局のときになりますと出ては消え、消えては出てくる。これはもう自由民主党という政党の中で、やっぱり宏池会が軸だということの証しなんですね。私の会長のときにも御案内のとおり、大宏池会構想、河野さんのところの派と、それから谷垣さん、小里さんという加藤の乱で出ていった人たちとのグループといっしょになろうじゃないかという話が再三出てきた。最終的に宮澤名誉会長にお話をして、「大宏池会構想は率直に言ってやめなさい」
と、はっきりおっしゃった。「谷垣さんのところとは話が詰まっていけばいいでしょう。それはあなたの判断に任せます」と御指示をいただいて、谷垣さんといっしょになった、こうした経過があります。
私は今の状況の中で、確かにおっしゃったように、政権を委ねるというような野党は当分出てこないだろうと思いますね。そういった中でかつての派閥全盛期の中選挙区のときのような、お互いに自由民主党の中で政権交代が行われる。疑似政権交代とよく言っておりましたけれども、ちょっと保守的な色合いが強いなといったらリベラル的な人が総裁になってというような、そういう繰り返しをやって、それで一貫して自民党は国民の信を得ることができたと、これは一つ間違いないことです。
だけど今の状況で、90人、100人の派閥をつくって、そこでお互いにやるんだというのは、小選挙区の中では無理だと私は思っております。大宏池会構想というのは、いろいろ意見交換や議論はどんどんやっていいと思います。だが、宏池会、われわれが前のめりする必要はない。大宏池会構想を視野に入れながらというのも、それは個人個人の考えですから、私は否定はしません。宏池会こそ保守本流なんだ。うちが柱なんだ。どうしても来るという人たちがいて、派閥ごとじゃなくて、数合わせだけじゃなくて、そういう人たちがどんどん来てくれるような環境を意見交換の中でつくっていく、そういう努力をしていただくほうが、私は政治の王道、宏池会の王道だと思っております。

宏池会の軸とは

若手 先ほどの話の中で、宏池会が柱になって、寄ってくる人は寄ってきたらいいんじゃないかと、私もそう思います。では、何の軸に依って立つのかということを、今回の60周年を機に私たちの中で確認をしていかなきゃいけない。そのときに、これまでずっと宏池会を見てこられて、これまでの宏池会の軸というのは何とお感じになられるか、教えていただきたい。

古賀 池田内閣というのは非常に時代背景がよかったと思うんですね。何がよかったかというと、その前の岸内閣は日本の国民を二分したんですね、安保と、右と左と、真っ二つに国民が分かれた、日本の政治に対して。それでは駄目だというんで、池田先生は、所得倍増という、経済に国民の目を向けた。分かれていた二つの国民がいっしょになる目標をつくってくれた。これは非常に素晴らしいことだと思うんですね。所得倍増ということが素晴らしいというより、二つに分かれた国民の気持ちを一つにするという手法の中で、これが一番効いたということだろうと思うんですね。
今見てみると、若干そのときに似てるんですよ。政治でいちばん大事なのはグレー、このゾーンをどうするかなんですね。コアとまったく反対と、そういった人たちじゃない、グレーの中間層が一番大事で、この中間層が世論を決めるんです。そこをどうやったら取り入れることができるかと。そうすると安倍さんの保守思想というのに対してリベラルと言ったって、今はなかなか通用しない。中間層の人たちはもう既にずっとリベラルなんですよ。安倍さんも本当の保守じゃない。岸さんのときと全然違いますからね、時代背景も違うけれども、違うんです。
そうであれば、やっぱり国の形をどういう方向に向けるかということしかないんです。明治時代から戦後まで続いた、ナショナルな価値観から違う価値観をつくっていくということが僕は大事なのかなと。その違う価値観というのは何かといったら、人と家庭に置くしかないんだろうなと。そういう思い切った政策をやはり宏池会の皆さん方でつくり上げていって、岸田会長が国民にしっかりとそのことを説明して、そしてナショナルな国家の価値観から、まったく違った国家像を創出していく。今はまったく池田さんが誕生したときに似てますよ。それほど二分はしてないけどね。そういうことを背景に考えながら、勉強してもらえばありがたいと思ってます。

宏池会内の役割分担

若手 今日のお話の中にあった総理総裁というのは天命がないとなれない、私もまったくそのとおりだと思ってまして、時代はいずれ回っていきます。今は一強だというふうに言われておりますけれども、やはり一つの路線が5年、10年続きますと、それに対する疲れだとか、慣れといいますか飽きといいますか、そういったのも必ず来るでしょうし、そのときにわれわれとしてどのようなビジョンを打ち出せるか。
そんな中で、具体的に政策に落とし込めば、どういうことなんだということを、やはり役割分担してやっていく。そういうクリエイティブな仕事を政策面でしていくメンバーも必要だし、党人派としてしっかり仕切っていっていく、そういう役割も両方必要なんだろうなと思っています。私は宏池会というとどちらかというと理念先行で、政局がやや遅れるといえばあれですけれども、率直に今先生が思っていらっしゃることがあれば、ぜひお聞かせください。

古賀 当然それは何でもかんでも一人でやれるものではないと思いますね。お互いの力を100%どうやって出すかと。そうなると人事というのは大事になっていくわけですね。岸田会長、そこは十分気をつけてやると。適材適所ということになると、やっぱりこの人なら任せられるという人を早く育てるというかそばに置くというか、それは非常に大事なことだろうと思います。
大宏池会といったことに前のめりになる前に、まずうちのほうの派をどうやって固めておくか。一致結束、しっかり信頼関係をつくるにはどうしたらいいかということで、みんな知恵出したほうが無難なんじゃないかなと思います。

宏池会に対する期待

若手 大宏池会、あるいは先日総裁任期延長になりましたが、政局的な話もいろいろあるわけですが、一方で政策的な話も先ほど出ました。今外務大臣連続では歴代1位という中で、岸田会長率いるわれわれ宏池会の今の取り組みを、名誉会長は現職を退かれ、以前より少し距離を置かれてどう評価されているのか、そして改めてどのようなことを特に期待されているのかをお聞かせいただきたく思います。

古賀 岸田会長のことを評価するとか、そんなおこがましいことを私はできません。ただ、言えることは、政治というのは常に権力闘争なんですね。ところが今の権力闘争には志がないんですよ。志がないから、僕は大宏池会構想とかなんとかというのは、前のめりせずに慎重にしなさいよと。志のない権力闘争ほど虚しいものはないし、国民の信頼を裏切るものはないんです。岸田会長に敢えて何かおこがましいけど言えと言われたら、哲学だけは持ってもらいたいなと。保守本流としての哲学だけは持ってもらいたい。
たとえば岸さんから池田さんになったときに、私はちょうど安保で国民が二分されていたときに、池田さんの所得倍増というのが出た。これ所得倍増というのは給料を倍にするというのではないんですよ。人づくりなんです。あの当時、わが社会はまだ貧しく貧困からの犯罪も多かったし、政治的な不満の原因にもなっていた。だからまず人をつくらなければならない。その為には、所得倍増が必要だということだったのです。基本は人づくりなんです。
だから今度も人に重点を置くという哲学を持って、自信を持ってやることですよ。志のない権力闘争というのは虚しいから、自分の哲学というものはきちっと持ってやったらいい。

最近の宏池会、そしてこれから

若手 最近の宏池会の雰囲気をちょっと感じたとこがありますので、御報告をさせていただきたいと思います。
昨年からいくつかの60年に向けての取り組みを若い人たちが中心に、こつこつとパワーを溜めてきたという感がありました。そして年が明け、いよいよ、名誉会長の後ろにありますポスターも決まりまして、1年間4回のシリーズということで、上川先生が実行委員長で、スタッフも位置づけもそれぞれの責任者も決まってまいりました。ここ3週間ほど前から例会、この部屋ほぼ満席というふうな、過去最高、この何年間の内で本当に大勢の皆さん方が集まっています。
そうした意味ではほんとに我々若手がそれぞれの得意分野の中で、この60周年の1年間をかけて、宏池会とはなんぞやというところを、それぞれが汗をかきながら進めている、たいへん良い雰囲気があるということを御報告させていただきます。素晴らしい1年になると思いますので、どうぞ、これからも御指導をよろしくお願いいたします。

古賀 いやいや、素晴らしいお話を聴かせていただいて、ほんとにうれしいというか、ありがたいことだと思いますね。私もぜひこれからも宏池会の一員として誇りを持って頑張りたいなと。
1日も早く宏池会を主軸とする政権が誕生して、国民の皆さんが何の心配もなく、安心して暮らせる、生活ができる。今日も東から太陽は出て、西に沈むんだと。明日もきっとそうだよと。そういう何の心配もない社会をつくる。これが大平先生の願いです。大平先生が総理になって初めての記者会見でそれをおっしゃってる。当たり前のことじゃないかって記者が言った。しかしその当たり前が政治家にとって一番大事な使命なんだということを私たちは忘れちゃいけないと思います。ぜひひとつ皆さんたちで頑張っていただきたい。本当にありがとうございます。

(平成29年3月)

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